練習 18.2
課題文
ἀτυχίαι τοὺς ανθρώπους σωφρονεστέρους καθιστᾶσιν.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
ἀτυχίαι | ἀτυχία | 女性名詞 | 複数/主格 | 不運 |
τοὺς | ὁ | 定冠詞 | 男性/複数/対格 | ἀνθρώπους にかかる |
ἀνθρώπους | ἄνθρωπος | 男性名詞 | 複数/対格 | 人間 |
σωφρονεστέρους | σώφρων | 形容詞 | 男性/複数/対格/比較級 | 思慮分別のある |
καθιστᾶσιν | καθίστημι | 動詞 | 三人称/複数/現在/ 直説法/能動態 |
据える, ~にさせる |
脚注
特になし。
出典と翻訳
不明。
メモ
本課の学習項目はμι動詞の変化。 従って、καθίστᾶσινの形を正しく把握することが、本課題文の主旨と思われる。
καθίστημιという語の構成をみると、κατάとἵστημιの合成語であることがわかる。 このとき1) κατάの末尾の母音が後続のἵστημιの語頭が母音である影響で落ちて、2) ἵστημιの語頭の気息が末尾母音の落ちたκατのτに移ってθになっている。
ἵστημιは本来σίστημιであったと考えられている。 だとすると、語幹はστηまたはσταでἵは現在幹を作るために付加された重複であると考えられる。
P.22 §36にある能動態での人称語尾を見ると、-σιで終わる人称語尾は三人称/複数/本時称の-ᾱσι。 つまり本来はκαθιστάᾱσιであるが、幹末母音のάと人称語尾先頭母音であるᾱが母音融合して、καθιστᾶσιという形(前側のαにアクセントがあったので、曲アクセント)になっている。 したがって、この形はκαθίστημιの三人称/複数/現在/直説法/能動態。
語の成り立ちを考えると、この語はκατά(下に) + ἵστημι(立たせる)。 転じて「据える(set down)」。 更に転じて「~にさせる(make)」。 この「~にさせる」という意味を持つときは、二つの(dupl. = duplicate)対格(acc.= accusative)を要求(羅c. = cum, 英with)する。 (LSJ A.II.4参照) この要求された二つの対格がτοὺς ἀνθρώπουςとσωφρονεστέρους。
ἀτυχίαというのは、運(τύχη)がない(否定の接頭辞α)こと。
以上をまとめると、「ἀτυχία(複数)はἄνθρωποςたちをよりσώφρωνにκαθίστημιする」くらいの内容が、本課題文の文意と思われる。