練習 18.4

課題文

ὁ Σωκράτης ἔστη πολὺν χρόνον ἄνευ ὑποδημάτων.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
定冠詞 男性/単数/主格 Σωκράτηςにかかる
Σωκράτης Σωκράτης 男性名詞 単数/主格 ソークラテース(人名)
ἔστη ἵστημι 動詞 三人称/単数/アオリスト/
直説法/能動態
立つ(第二アオリスト)
πολύν πολύς 形容詞 男性 たくさんな
χρόνον χρόνος 男性名詞 単数/対格 時間
ἄνευ ἄνευ 前置詞 この語は変化しない (属格を)なしに
ὑποδημάτων ὑπόδημα 中性名詞 複数/属格 履き物

脚注

特になし。

出典と翻訳

不詳。

ただし、プラトーン, 『饗宴』, 220b-dに

220b
ἄλλα, καί ποτε ὄντος πάγου οἵου δεινοτάτου, καὶ πάντων ἢ οὐκ ἐξιόντων ἔνδοθεν, ἢ εἴ τις ἐξίοι, ἠμφιεσμένων τε θαυμαστὰ δὴ ὅσα καὶ ὑποδεδεμένων καὶ ἐνειλιγμένων τοὺς πόδας εἰς πίλους καὶ ἀρνακίδας, οὗτος δ᾽ ἐν τούτοις ἐξῄει ἔχων ἱμάτιον μὲν τοιοῦτον οἷόνπερ καὶ πρότερον εἰώθει φορεῖν, ἀνυπόδητος δὲ διὰ τοῦ κρυστάλλου ῥᾷον ἐπορεύετο ἢ οἱ ἄλλοι ὑποδεδεμένοι, οἱ δὲ στρατιῶται ὑπέβλεπον

220c
αὐτὸν ὡς καταφρονοῦντα σφῶν. καὶ ταῦτα μὲν δὴ ταῦτα·

“οἷον δ᾽ αὖ τόδ᾽ ἔρεξε καὶ ἔτλη καρτερὸς ἀνὴρ”(Hom. Od. 4.242)

ἐκεῖ ποτε ἐπὶ στρατιᾶς, ἄξιον ἀκοῦσαι. συννοήσας γὰρ αὐτόθι ἕωθέν τι εἱστήκει σκοπῶν, καὶ ἐπειδὴ οὐ προυχώρει αὐτῷ, οὐκ ἀνίει ἀλλὰ εἱστήκει ζητῶν. καὶ ἤδη ἦν μεσημβρία, καὶ ἅνθρωποι ᾐσθάνοντο, καὶ θαυμάζοντες ἄλλος ἄλλῳ ἔλεγεν ὅτι Σωκράτης ἐξ ἑωθινοῦ φροντίζων τι ἕστηκε. τελευτῶντες δέ τινες τῶν Ἰώνων, ἐπειδὴ ἑσπέρα ἦν, δειπνήσαντες—καὶ

220d
γὰρ θέρος τότε γ᾽ ἦν—χαμεύνια ἐξενεγκάμενοι ἅμα μὲν ἐν τῷ ψύχει καθηῦδον, ἅμα δ᾽ ἐφύλαττον αὐτὸν εἰ καὶ τὴν νύκτα ἑστήξοι. ὁ δὲ εἱστήκει μέχρι ἕως ἐγένετο καὶ ἥλιος ἀνέσχεν: ἔπειτα ᾤχετ᾽ ἀπιὼν προσευξάμενος τῷ ἡλίῳ. εἰ δὲ βούλεσθε ἐν ταῖς μάχαις—τοῦτο γὰρ δὴ δίκαιόν γε αὐτῷ ἀποδοῦναι—ὅτε γὰρ ἡ μάχη ἦν ἐξ ἧς ἐμοὶ καὶ τἀριστεῖα ἔδοσαν οἱ στρατηγοί, οὐδεὶς ἄλλος ἐμὲ ἔσωσεν

さらにまた冬の寒さに対する抵抗力からいっても(というのは、あの地方の冬は恐るべきものだからである)、ソクラテスは幾多の驚くべきことを為した。 が、なかんずく、寒さの非常に厳しいある日のこと、他の者は皆全く外出しないか、またはたまに外出しても、驚くべく厚着をして、鞜を穿いて、さらに脚をば毛氈で仔羊の皮とで包んだほど寒い日だったが、この場合にも彼はやっぱり例の着馴れた該当を纏うて外出し、鞜を穿いている他の者よりも易々やすやすとはだしで氷の上を歩いたのだった。 ところが兵士達の側では、ソクラテスは自分達に恥をかかせようとしてあんな事をするのだという風に邪推の眼をもって見ていた。

(36)『この話はまずこれくらいにしよう。 が、しかしかつてあの戦場で「この勇士がさらに何を為遂げまた何に堪えたか」、それは十分聴く価値があると思う。 ある時のこと何事か考え始めた彼は、考えに耽りながら早朝から同じ場所に立ち尽くしていた、が、一向解決がつかぬので、それを放棄せずに、そこに立ったまま思いを凝らしていた。 そうするうちにもう正午になった、すると兵士達もそれに気づいて驚き怪しみながら、ソクラテスが早朝から何か考え込んで立ったまま動かぬということを次から次へと伝えた。 おしまいに、夕方になったので、二三のイオニヤ人は、食事をすませると、—ちょうど夏だったから—臥床を持出して来た、これは涼しい所で寝るためであると同時に、この人がはたして夜を徹してそこに立っているものか、それを見張りするためでもあった。 ところが、彼は夜が明けて太陽が昇るまで立ちつづけた。 それから太陽に祈を捧げた後、立ち去ったのだ。

『それから今度は、諸君が所望されるなら、戦場における彼の態度について話そうと思う—そうするのが公正というものだから。 僕が指揮官から感状を貰ったの戦闘に際して、僕を救い出してくれた者はこの人以外の何人でもなかった。
(久保 勉 訳)

と書かれている箇所があり、こういった記述を念頭に置いていると思われる。

メモ

本課の学習内容の一つがμι動詞の変化、特にἵστημιの変化なので、στηの形を正しく把握することが、本課題文の主旨と思われる。

στηἵστημι語幹(P.67, §89.の変化表をみるとわかるように、他にσταを持つことがある)、これに加音であるεがついて、人称語尾がない。

加音は過去性を表すので副時称。 現在幹を作るための重複(ἱ-)もないので、これはアオリスト。 未完了では現在幹を作る—未完了は常に現在幹をとる—ための重複であるἱ-が時量的加音(P.21, §34.2)をとる。 完了(P.124, §165.)の語頭につくἑ-には気息がついているので、こちらは重複として機能している。 過去完了ではこの重複に対して音節的加音(εἱ-)として出て来る(P.124, §165.)ので、ε-加音として出てきた時点で、アオリストであることがほぼ決まる。

時称接尾辞である-σα-がないので、これは第二アオリスト。 副時称で人称語尾がないので、これは三人称/単数であることがわかる(P.22, §36.参照)。

文の基本的な構造は、Σωκράτηςἵστημιしていた(第二アオリスト)、というもの。 主動詞ἵστημιは第一アオリスト(他動詞として機能)と第二アオリスト(自動詞として機能)の二つのアオリスト形を持つ(P.67, §89.3)ことに注意。 これにいくつかの説明がついている形。

出典がなく、どういう文脈で語られているかがわからないので何とも言えないが、このアオリストは単なる過去を述べたのではなくて、「報告のアオリスト」かもしれない。

Smythの§1929に

The aorist enumerates and reports past events. It may be employed in brief continuous narration (X. A. 1.9.6). As a narrative tense it is often used to state the chief events and facts, while the other past tenses set forth subordinate actions and attendant circumstances.

アオリストは、過去の出来事を列挙し、報告する。 それは、簡潔で継続的な物語(クセノポーン『アナバシス』1.9.6)に用いられることがある。 物語の時制として、主要な出来事や事実を述べるのにしばしば用いられ、その一方で他の過去時制は補助的な行動や付随的な状況を提示する。

とあり、これはアオリストの「動作の継続や開始といった動作態を持たず、限定されずに動作のみを述べる」という特徴の一つとして機能しているらしい。

χρόνοςは「時間」であるから、ここでの対格はもちろん「期間の対格」(P.27, §46.1)。

以上をまとめると、「Σωκράτηςπολύςχρόνος(の間)、ὑπόδημα(複数)もなしに(ἄνευ)ἵστημιしていた」くらいの内容が、本課題文の文意と思われる。 このとき文脈がわからないので、アオリストを単に過去時称と読むか、報告のアオリストと読むかは読み手次第。


ギリシア語小辞トップに戻る
ギリシア語方言トップに戻る
ギリシア語文法トップに戻る
ギリシア神話トップに戻る
トップに戻る