練習 17.10
課題文
ἐν γὰρ ἓξ ἡμέραις ἐποίησε Κύριος τὸν οὐρανὸν καὶ τὴν γῆν καὶ τὴν θάλασσαν καὶ πάντα τὰ ἐν αὐτοῖς, καὶ κατέπαυσε τῇ ἡμέρᾳ ἑβδόμῃ· διὰ τοῦτο εὐλόγησε Κύριος τὴν ἡμέραν τὴν ἑβδόμην καὶ ἡγίασεν αὐτήν.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
ἐν | ἐν | 前置詞 | この語は変化しない | (与格の)中で |
γὰρ | γὰρ | 小辞 | この語は変化しない | なぜなら |
ἕξ | ἔξ | 基数詞 | この語は変化しない | 6 |
ἡμέραις | ἡμέρα | 女性名詞 | 複数/与格 | 昼, 日 |
Κύριος | Κύριος | 男性名詞 | 単数/主格 | 主人, (キリスト教の)主 |
τὸν | ὁ | 定冠詞 | 男性/単数/対格 | οὐρανόνにかかる |
οὐρανόν | οὐρανός | 男性名詞 | 単数/対格 | 天空 |
καί | καί | 小辞 | この語は変化しない | そして |
τήν | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/対格 | γῆνにかかる |
γῆν | γῆ | 女性名詞 | 単数/対格 | 大地 |
καί | καί | 小辞 | この語は変化しない | そして |
τήν | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/対格 | θάλασσανにかかる |
τάλασσαν | τάλασσα | 女性名詞 | 単数/対格 | 海 |
καί | καί | 小辞 | この語は変化しない | そして |
πάντα | πᾶς | 形容詞 | 中性/複数/対格 | すべての |
τά | ὁ | 定冠詞 | 中性/複数/対格 | ἐν αὐτοῖςを名詞化 |
ἐν | ἐν | 前置詞 | この語は変化しない | (与格の)中の |
αὐτοῖς | αὐτός | 強意代名詞 | 中性/複数/与格 | それ(斜格用法) |
καί | καί | 小辞 | この語は変化しない | そして |
κατέπαυσε | καταπαύω | 動詞 | 三人称/単数/アオリスト/直説法/能動態 | やめさせる 終わらせる |
τῇ | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/与格 | ἡμέρᾳにかかる |
ἡμέρᾳ | ἡμέρα | 女性名詞 | 単数/与格 | 昼, 日 |
ἑβδόμῃ | ἕβδομος | 序数詞 | 女性/単数/与格 | 7番目の |
διά | διά | 前置詞 | この語は変化しない | (対格の)故に |
τοῦτο | οὗτος | 指示代名詞 | 中性/単数/対格 | それ |
εὐλόγησε | εὐλογέω | 動詞 | 三人称/単数/アオリスト/直説法/能動態 | ほめる, 祝福する |
Κύριος | Κύριος | 男性名詞 | 単数/主格 | 主人, (キリスト教の)主 |
τήν | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/対格 | ἡμέρανにかかる |
ἡμέραν | ἡμέρα | 女性名詞 | 単数/対格 | 昼, 日 |
τήν | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/対格 | ἑβδόμηνにかかる |
ἑβδόμην | ἕβδομος | 序数詞 | 女性/単数/対格 | 7番目の |
καί | καί | 小辞 | この語は変化しない | そして |
ἡγίασεν | ἁγιάζω | 動詞 | 三人称/単数/アオリスト/直説法/能動態 | 神聖なものとする |
αὐτήν | αὐτός | 強意代名詞 | 女性/単数/対格 | ἡμέραν ἑβδόμην を指す(斜格用法) |
脚注
θάλασσαν = θάλατταν
κατέπαυσεはここでは自動詞で「休息した」の意。 古典期なら中動態を用いるのが普通。
単語欄を見るとわかる通り、καταπαύωは「やめさせる」とか「終わらせる」という意味を持つ他動詞。 英語ならばmake oneselfのように再帰代名詞を使うが、古典ギリシア語には「中動態」という動作の内容が行為者自身に影響を与えるような態(voice)がある。 中動態については、P.99, 第25課で初めて学ぶ。
この語の三人称/単数/アオリスト/直説法/中動態はκατεπαύσατοような形になる(P.109, 第27課参照)が、中動態には、a)自分自身を動作の対象とする(P.99, §130.1, 再帰的用法)とか、b)自分自身のために動作をする(P.99, §130.2, 間接再帰的用法)などがある。 つまり他動詞であっても中動態で使えば、「主ご自身(の動作をすっかり)終わらせた」とか「主ご自身のために(動作をすっかり)終わらせた」といったニュアンスを持つであろうに、ということを脚注では主張している。
※ 水谷のテキストでは「中動相」となっているが、「相」は用語aspectの訳語(「動作態」とも訳される)なので、本サイトではvoiceの訳語である「態」を使う。
出典と翻訳
出エジプト記, 20.11
20.8
μνήσθητι τὴν ἡμέραν τῶν σαββάτων ἁγιάζειν αὐτήν
20.9
ἓξ ἡμέρας ἐργᾷ καὶ ποιήσεις πάντα τὰ ἔργα σου
20.10
τῇ δὲ ἡμέρᾳ τῇ ἑβδόμῃ σάββατα κυρίῳ τῷ θεῷ σου οὐ ποιήσεις ἐν αὐτῇ πᾶν ἔργον σὺ καὶ ὁ υἱός σου καὶ ἡ θυγάτηρ σου ὁ παῖς σου καὶ ἡ παιδίσκη σου ὁ βοῦς σου καὶ τὸ ὑποζύγιόν σου καὶ πᾶν κτῆνός σου καὶ ὁ προσήλυτος ὁ παροικῶν ἐν σοί
20.11
ἐν γὰρ ἓξ ἡμέραις ἐποίησεν κύριος τὸν οὐρανὸν καὶ τὴν γῆν καὶ τὴν θάλασσαν καὶ πάντα τὰ ἐν αὐτοῖς καὶ κατέπαυσεν τῇ ἡμέρᾳ τῇ ἑβδόμῃ διὰ τοῦτο εὐλόγησεν κύριος τὴν ἡμέραν τὴν ἑβδόμην καὶ ἡγίασεν αὐτήν
(新共同訳)
メモ
本課の学習項目の一つが、πᾶςの変化。 したがって、πάνταの形を正しく把握することが、本課題文の主旨と思われる。
コロンまでの文の基本構造は「Κύριοςはποιέωした(アオリスト)。そして(καί)、(Κύριοςは) καταπαύωした」というもの。 これにいろいろな説明がついてくる。
小辞γάρはこの文章に先立つ20.10の内容「安息日にはいかなる仕事をしてはならない」という主張の理由を導入している。 前置詞ἐνは与格を要求するが、基数詞ἕξは語形変化をしないので、その次のἡμέραιςまでまたなくてはならない。 ἐν ἓξ ἡμέραιςというブロックで「6の日の中で」が直訳だが、要するに六日間の間、ということ。
Κύριοςの直後からποιέωした対象物が対格で列挙されている。 αὐτοῖςはおそらく中性。 そういったものども(中性)の中にある(ἐν)森羅万象を定冠詞τάで名詞化している感じ。 これに形容詞πάνταがかかって、そういったものどもすべてを、ということと思われる。 これを男性と解釈してしまうと、人(特に男性)か男性名詞で表されるような何かに限定されてしまうので、ふさわしくないと感じる。
脚注にもあるように、καταπαύωを自動詞として使っている。 παύωだけでも「やめさせる」とか「終わらせる」という意味があり、前綴りに使われているκατάのニュアンスが気になるところ。 辞書を見ると、複合語で使われる場合(E κατά in COMPOS.)のV.項に、freq. only to strengthen the notion of the simple word,という記述があり、ここでは「すっかり」終わらせる、というニュアンスだと思われる。
τῇ ἡμέρᾳ τῇ ἑβδόμῃは時間の与格(P.27, §46.2)。 時間的な点、特定の時間を表す。 ἕβδομοςは数詞の中でも序数詞(Ordinal Numeral)と呼ばれるもの。 水谷のテキスト本文では説明がないが、巻末付録(P.170, C. 数詞)に出て来る。 普通に語形変化するので、形容詞と考えてもいいのかもしれない。 したがって、τῇ ἡμέρᾳ τῇ ἑβδόμῃは「七日目というまさにその日に」くらいの意味。
コロン以降の基本構造は、「Κύριοςはεὐλογέωした、そして(καί)、ἁγιάζωした」というもの。
コロンの直後はδιὰ τοῦτοから始まる。 τοῦτο(このこと)とは、主がまさに第七日目に休息をとられた、ということ。
εὐλογέωはよい(εὐ)言葉(λόγος)を投げかけること。 ἁγιάζωは、ある対象をἅγιοςなものとすること。 その結果として、単語欄にあるような訳語になる。
Κύριοςは何をεὐλογέωしたりἁγιάζωしたのかというと、τὴν ἡμέραν τὴν ἑβδόμην。 αὐτήνは強意代名詞αὐτόςの斜格用法(P.48, §67.3)。 女性/単数/対格で表されていることから、τὴν ἡμέραν τὴν ἑβδόμηνを表している。
以上をまとめると、「そのわけは(γάρ)、ἕξなἡμέραたちの間(ἐν)、Κύριοςはοὐρανόςや(καί) γῆ、そして(καί) θάλασσα、さらに(καί)それらの中にあるすべてのものを(πάντα τὰ ἐν αὐτοῖς) ποιέωして、ἕβδομοςなἡμέραにκαταπαύωした。 このこと故に(διὰ τοῦτο)、Κύριοςはἕβδομοςなἡμέραをεὐλογέωし、さらに(καί)、この日を(αὐτὴν) ἁγιάζωした」くらいの内容が、本課題文の文意と思われる。