練習 17.8

課題文

Καλλίμαχος ὁ γραμματικὸς τὸ μέγα βιβλίον ἴσον ἔλεγεν εἶναι τῷ μεγάλῳ κακῷ.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
Καλλίμαχος Καλλίμαχος 男性名詞 単数/主格 カリマコス(人名)
定冠詞 男性/単数/主格 γραμματικόςにかかる
γραμματικός γραμματικός 男性名詞 単数/主格 文献学者, 文法家
τό 定冠詞 中性/単数/対格 βιβλίονにかかる
μέγα μέγας 形容詞 中性/単数/対格 大きい
βιβλίον βιβλίον 中性名詞 単数/対格
ἴσον ἴσος 形容詞 中性/単数/対格 (与格に)等しい
ἔλεγεν λέγω 動詞 三人称/単数/未完了/直説法/現在 言う
εἶναι εἰμί 動詞 不定詞/現在/能動態 ~である
τῷ 定冠詞 中性/単数/与格 κακῷにかかる
μεγάλῳ μέγας 形容詞 中性/単数/与格 大きい
κακῷ κακός 形容詞 中性/単数/与格 悪い, 劣悪な

脚注

特になし。

出典と翻訳

アテーナイオス, 食卓の賢人たち 3.72a

ὁτι Καλλίμαχος ὁ γραμματικὸς το μέγα βιβλίον ἴσον ἔλεγεν εἶναι τῷ μεγάλῳ κακῷ. κιβώρια. Νίκανδρος ἐν Γεωργικοῖς·

σπείρειας κυάμων Αἰγύπτιον, ὄφρα θερείης ἀνθέων μὲν στεφάνους ἀνύσῃς, τὰ δὲ πεπτηῶτα ἀκμαίου καρποῖο κιβώρια δαινυμένοισιν

アテーナイオスいわく、文芸の教師カリマコスは、大きな書物は大きな災難に等しいと言っている。

ニカンドロスの『農耕詩』に言う、 エジプト豆の種を蒔け。夏には その花を冠に編み、稔の時になれば、 その花托は、かねてよりこの豆に憧れを抱いて、 (柳沼重剛 訳)

ニーカンドロスの引用はこの後の3.72bにも二行ほど続くが、この引用もその後の本文も、本課題文との内容的な繋がりがないので割愛。 というか、本課題文が3巻の冒頭に唐突に挿入されていて、どういう意図で文を引用しているのか、著者であるアテーナイオス(もしくは挿入しようとしたであろう筆写職とか注釈者などの誰か)が課題文の趣旨をどのように捕えていたのか、がよくわからない。

カリマコスの生きた時代の「本」はいわゆる「巻物」であったが、私たちが時代劇で見る巻物や、ゲームアイテムなどでイメージするスクロールなどよりも、かなり大きなサイズのものだったらしい。 そういったものの中でも大部のものとなれば、取り扱いや保存に苦労したであろうことは想像に難くない。 などといったことがすぐに思い浮かぶものの、この文が意図する内容の本当のところはどうであったのか、は前述の通りよくわからない。

メモ

本課の主要な学習項目の一つがμέγαςの変化なので、μέγαおよびμεγάλῳの形を正しく把握することが、本課題文の主旨と思われる。

文の基本構造は、「Καλλίμαχοςλέγωしていた(未完了)」というもの。 ὁ γραμματικόςΚαλλίμαχοςに性/数/格が一致するから、「γραμματικόςであるΚαλλίμαχοςは」という主語に読む。

λέγωしている内容が、τὸ μέγα βιβλίον ἴσον εἶναι τῷ μεγάλῳ κακῷの部分。 βιβλίονは不定詞εἶναιの主語と読んで対格と判断する。 そうすると、同様にτό, μέγα, ἴσονも同じく対格と判断される。

βιβλίονは中性名詞なので主格も同形だが、主格に読むと、主格以外には考えられないΚαλλίμαχος ὁ γραμματικόςとの関係が不明になる。 不定詞が定動詞ἐστι(もしくはεἰμίの三人称/単数で表されるような他の形)なら少しはわかるが、今度はἔλεγενと動詞がダブることになるので、やはり主格で読むことは適切ではない、と判断した。

κακῷは恐らく「κακόςであること」であろうと読み、ここでは中性と判断した。 定冠詞τῷは形容詞κακῷを名詞化していると読み、μεγάλῳがそれを修飾していると読んで、どちらも同様に中性と判断した。

語形の上ではτῷ μεγάλῳ κακῷは男性ともとることができる。 しかし、そうすると「μέγαςκακόςであるような男(もしくは男性名詞で表されるような何か)」と読むことになるが、前後の文脈でそう読むべき内容が見つからないので、男性とはとらなかった。

テキストの単語欄には書いてないが、辞書を見ると形容詞ἴσοςは、equal in size, strength, or number, c. dat.とあり、与格(dat. = dative)と一緒に(c. = 羅cum = 英with)使われることがあるとわかる。

つまりλέγωしている内容とは、「μέγαςβιβλίονは、μέγαςκακόςであること(中性)にἴσοςである(εἰμί)」くらいの内容になる。

まとめると、「γραμματικόςであるΚαλλίμαχοςは、μέγαςβιβλίονμέγαςκακόςであること(中性)にἴσοςである(εἰμί)とλέγωしていた(未完了)」くらいの内容が、本課題文の文意と思われる。


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