練習 17.7
課題文
τότε δὲ τὰ πολλὰ τῶν πολιτικῶν οἱ ἐννέα ἄρχοντες ἔπρασσον.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
τότε | τότε | 副詞 | この語は変化しない | そのとき, 当時 |
δέ | δέ | 小辞 | この語は変化しない | さらに, しかし, そして |
τά | ὁ | 定冠詞 | 中性/複数/対格 | πολλάにかかる |
πολλά | πολύς | 形容詞 | 中性/複数/対格 | たくさんの |
τῶν | ὁ | 定冠詞 | 中性/複数/属格 | πολιτικῶνにかかる |
πολιτικῶν | πολιτικός | 形容詞 | 中性/複数/属格 | 市民の, 政治の |
οἱ | ὁ | 定冠詞 | 男性/複数/主格 | ἄρχοντεςにかかる |
ἐννέα | ἐννέα | 数詞 | この語は変化しない | 9(人) |
ἄρχοντες | ἄρχων | 男性名詞 | 複数/主格 | 支配者, アルコーン |
ἔπρασσον | πράττω | 動詞 | 三人称/複数/未完了/直説法/能動態 | 行う, なす |
脚注
ἔπρασσον = ἔπραττον。
他の方言では-σσ-と綴るところを、アッティカ方言では-ττ-と綴ることが多い。 LSJ(Liddell & Scott & Jones, Greek-English Lexicon, OXFORD)などでは見出し語を主に-σσ-で綴っている。
一方で本テキストは「紀元前四、五世紀ころのアッティカ方言」を中心に学んでいるので、見出し語は-ττ-で綴られている。
トゥーキューディデースはアテーナイ(アッティカ地方)出身だが、ここではナゼか-ττ-ではなくて-σσ-に綴っている。
出典と翻訳
トゥーキューディデース, 1.126.8
χρόνου δὲ ἐγγιγνομένου οἱ Ἀθηναῖοι τρυχόμενοι τῇ προσεδρίᾳ ἀπῆλθον οἱ πολλοί, ἐπιτρέψαντες τοῖς ἐννέα ἄρχουσι τήν τε φυλακὴν καὶ τὸ πᾶν αὐτοκράτορσι διαθεῖναι ᾗ ἂν ἄριστα διαγιγνώσκωσιν· τότε δὲ τὰ πολλὰ τῶν πολιτικῶν οἱ ἐννέα ἄρχοντες ἔπρασσον.
しかしそのうちにアテナイ人は包囲に飽きてしまった。
そこで九人の執政官にこの警備を委ね、さらにすべての裁量もこの九人の判断に任せて民衆は帰ってしまった。
すなわち当時は九人の執政官が政治の実権を握っていたのである。
(小西晴雄 訳)
メモ
本課の主要な学習項目の一つが、πολύςの変化。 したがって、πολλάの形を正しく把握することが、本課題文の趣旨と思われる。
文の基本構造は、「οἱ ἄρχοντεςがπράττωしていた(未完了)」というもの。 οἱ ἄρχοντεςはἐννέα人だけいて、πράττωしていた内容は「πολιτικόςなことどもの内の(部分属格)πολύςなことども」であることがわかる。 このため、τῶν πολιτικῶνを中性、τὰ πολλάを対格として読んでいる。
小辞δέは前の文から視点や話題が変わることが多く、ここではとりあえず「ところで」くらいに訳しておくと、「ところで(δέ)、当時(τότε)は、πολιτικόςなことどもの内のπολύςなことどもを、ἐννέα人のἄρχωνたちがπράττωしていた(未完了)」くらいの内容が、本課題文の文意と思われる。