練習 17.5
課題文
ἀρχὴ καὶ ῥίζα παντὸς ἀγαθοῦ ἡ τῆς γαστρὸς ἡδονή.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
ἀρχή | ἀρχή | 女性名詞 | 単数/主格 | 根源, 始まり |
καί | καί | 小辞 | この語は変化しない | と, そして |
ῥίζα | ῥίζα | 女性名詞 | 単数/主格 | 根 |
παντός | πᾶς | 形容詞 | 中性/単数/属格 | すべての, あらゆる |
ἀγαθοῦ | ἀγαθός | 形容詞 | 中性/単数/属格 | 善い, 優れた |
ἡ | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/主格 | ἡδονήにかかる |
τῆς | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/属格 | γαστρόςにかかる |
γαστρός | γαστήρ | 女性名詞 | 単数/属格 | 胃, 腹 |
ἡδονή | ἡδονή | 女性名詞 | 単数/主格 | 快楽 |
脚注
特になし。
出典と翻訳
エピクーロス, 断片 B59
Ἀρχὴ καὶ ῥίζα παντὸς ἀγαθοῦ ἡ τῆς γαστρὸς ἡδονή· καὶ τὰ σοφὰ καὶ τὰ περιττὰ ἐπὶ ταύτην ἔχει τὴν ἀναφοράν.
いっさいの善の始めであり根であるのは、胃袋の快である。
知的な善も趣味的な善も、これに帰せられる。
(
メモ
本課の主要な学習項目の一つがπᾶςの変化なので、παντόςの形を把握することが、本課題文の主旨と思われる。
主動詞が見当たらないので、ἐστι(ν)が省略されているἡ ἡδονήを主語としたcopula文と解釈する。 つまり、「ἡδονήが〇〇である」というのが本課題文の基本構造。
τῆς γαστόςはἡ ἡδονήの定冠詞と名詞の間に挿入されているので、主語であるἡδονήを修飾していると考える。
παντὸς ἀγαθοῦは男性とも解釈しうるが、ここでは中性と判断した。 その理由は、男性と考えた場合は 1)人、2)男性名詞として表されるような何か、のどちらも文章内に出てこないので不適切、と思われるから。 中性と考える場合「πᾶςなἀγαθόςである事(または物)の(属格)」として考えられる。
まとめると、「γαστήρのἡδονήが、πᾶςなἀγαθόςであること(中性)のἀρχήでありῥίζαである」くらいの内容が、本課題文の文意と思われる。