練習 18.10

課題文

ποιητής τις λέγει ὅτι οἱ θεοί, ἐπειδὴ ἐποίησαν τὰ ζῷα γέρας τι ἑκάστῳ διένειμαν. καὶ τοῖς μὲν ταύροις κέρα ἔδοσαν. τοῖς δὲ ἵπποις ὁπλὰς, τοῖς δὲ ὄρνισι πτέρυγας, καὶ τοῖς ἄλλοις ἄλλο τι τοιοῦτον. ἀνθρώποις δὲ οὐδὲν τοιοῦτον ἔδοσαν, ἀλλὰ τοῖς μὲν ἀνδράσι ἀρετήν, ταῖς δὲ γυναιξὶ κάλλος. διὰ δὲ ταῦτα ἡ γυνὴ πάντων κρατίστη ἐστί. οἱ γὰρ ἄνδρες πάντα νικῶσι τῇ ἀρετῇ, αἱ δὲ γυναῖκες νικῶσι τοὺς ἄνδρας τῷ κάλλει.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
ποιητής ποιητής 男性名詞 単数/主格 詩人
τις τις 不定代名詞 男性/単数/主格 ある人, 誰か
λέγει λέγω 動詞 三人称/単数/現在/直説法/能動態 言う
ὅτι ὅτι 接続詞 この語は変化しない ~のことを, ~の故に
οἱ 定冠詞 男性/単数/主格 θεοίにかかる
θεοί θεός 男性名詞 複数/主格
ἐπειδή ἐπεί 副詞 この語は変化しない ~の時に, ~だから
ἐποίησαν ποιέω 動詞 三人称/複数/アオリスト/
直説法/能動態
作る
τά 定冠詞 中性/複数/対格 ζῷαにかかる
γέρας γέρας 中性名詞 単数/対格 褒美, 贈り物
τι τις 不定代名詞 中性/単数/対格 ある物, 何か
ἑκάστῷ ἕκαστος 形容詞 中性/単数/与格 おのおの
διένειμαν διανέμω 動詞 三人称/複数/アオリスト/
直説法/能動態
分配する
καί καί 小辞 この語は変化しない そして
τοῖς 定冠詞 男性/複数/与格 ταύροιςにかかる
μέν μέν 小辞 この語は変化しない (δέと対比して)
一方で
ταύροις ταῦρος 男性名詞 複数/与格
κέρα κέρας 中性名詞 複数/対格 角(つの)
ἔδοσαν δίδωμι 動詞 三人称/複数/アオリスト/
直説法/能動態
与える
τοῖς 定冠詞 男性/複数/与格 ἵπποιςにかかる
δέ δέ 小辞 この語は変化しない (μένと対比して)
他方で
ἵπποις ἵππος 男性名詞 複数/与格
ὁπλάς ὁπλή 女性名詞 複数/対格 ひづめ
τοῖς 定冠詞 男性/複数/対格 ὄρνισιにかかる
δέ δέ 小辞 この語は変化しない (μένと対比して)
他方で
ὄρνισι ὄρνις 男性名詞 複数/与格
πτέρυγας πτέρξ 女性名詞 複数/対格
καί καί 小辞 この語は変化しない そして
τοῖς 定冠詞 中性/複数/与格 ἄλλοιςにかかる
ἄλλοις ἄλλος 形容詞 中性/複数/与格 他の
ἄλλο ἄλλος 形容詞 中性/複数/対格 他の
τι τις 不定代名詞 中性/単数/対格 ある物, 何か
τοιοῦτον τοιοῦτος 形容詞 中性/単数/対格 そのような
ἀνθρώποις ἄνθρωπος 男性名詞 複数/与格 人間
δέ δέ 小辞 この語は変化しない 文の視点を
変えている
οὐδέν οὐδείς 数詞 中性/単数/対格 何も~ない
τοιοῦτον τοιοῦτος 形容詞 中性/単数/対格 そのような
ἔδοσαν δίδωμι 動詞 三人称/複数/アオリスト/
直説法/能動態
与える
ἀλλά ἀλλά 小辞 この語は変化しない (οὐδένと対応して)
そうではなくて
τοῖς 定冠詞 男性/複数/与格 ἀνδράσιにかかる
μέν μέν 小辞 この語は変化しない (δέと対比して)
一方で
ἀνδράσι ἀνήρ 男性名詞 複数/与格
ἀρετήν ἀρετή 女性名詞 単数/対格 勇気
ταῖς 定冠詞 女性/複数/与格 γυναιξίにかかる
δέ δέ 小辞 この語は変化しない (μένと対比して)
他方で
γυναιξί γυνή 女性名詞 複数/与格
κάλλος κάλλος 中性名詞 単数/対格 美しさ
διά διά 前置詞 この語は変化しない (対格の)故に
δέ δέ 小辞 この語は変化しない 文の視点を
変えている
ταῦτα οὗτος 指示代名詞 中性/複数/対格 この
定冠詞 女性/単数/主格 γυνήにかかる
γυνή γυνή 女性名詞 単数/主格
πάντων πᾶς 形容詞 中性/複数/属格 すべての, あらゆる
κρατίστη κράτιστος 形容詞 女性/単数/主格 最も強い(最上級)
ἐστί εἰμί 動詞 三人称/単数/現在/直説法/能動態 ~である
οἱ 定冠詞 男性/複数/主格 ἄνδρεςにかかる
γάρ γάρ 小辞 この語は変化しない 理由を表す
ἄνδρες ἀνήρ 男性名詞 複数/主格
πάντα πᾶς 形容詞 中性/複数/対格 すべての, あらゆる
νικῶσι νικάω 動詞 三人称/複数/現在/直説法/能動態 勝つ, 征服する
τῇ 定冠詞 女性/単数/与格 ἀρετῇにかかる
ἀρετῇ ἀρετή 女性名詞 単数/与格 勇気
αἱ 定冠詞 女性/複数/主格 γυναῖκεςにかかる
δέ δέ 小辞 この語は変化しない οἱ ἄνδρες
対比している
γυναῖκες γυνή 女性名詞 複数/主格
νικῶσι νικάω 動詞 三人称/複数/現在/直説法/能動態 勝つ, 征服する
τοὺς 定冠詞 男性/複数/対格 ἄνδραςにかかる
ἄνδρας ἀνήρ 男性名詞 複数/対格
τῷ 定冠詞 中性/単数/与格 κάλλειにかかる
κάλλει κάλλος 中性名詞 単数/与格 美しさ

脚注

特になし。

出典と翻訳

不明。

ただし、F.H. Colson, Stories and Legends : a first Greek reader, with notes, bocabulary and exercises, Part I : Shorter Stories and Fables, 第6話に(アオリスト分詞ποιήσαντεςが本課題文ではἐπειδὴ ἐποίησανに、現在分詞を使ったκαὶ τοῦτο ἔχουσαδιὰ ταῦταに改変されている— 分詞は第20課以降で学ぶ —とはいえ)同様の物語が収録されている。 収録されている物語の多くはイソップ(アイソーポス)寓話集のものだが、イソップ寓話集にこのような物語はない。

他にギリシア語の寓話集なら、比較的有名なものにバブリウスのものがあるが、私には同様の物語を見つけることができなかった。

それにしても私の不勉強のせいか、ギリシアの著者は女性に対して(少なくとも作品上では)あまりよい意見を持つ人がいないように思えるのだが、この課題文のような主張をするποιητής τιςが具体的に誰を指すのか、とても気になる。

メモ

本課の学習項目はμι動詞の変化であるので、文中で二回出て来るἔδοσανの形を正しく把握することが、本課題文の主旨の一つと思われる。 もう一つの主旨は、ある程度の文章量を読むことで、長文に対する慣れを養うことと思われる。

δοσανはまず語幹-δο-であるから、見出し語はδίδωμι(語幹-δο-または-δω-)と予想される。 語頭のε-加音と考えると、時称は副時称であろうと予想できる。 副時称/三人称/複数の人称語尾(P.22, §36.参照)である-σανが見えるので、副時称であることが確定する。

副時称として考えるとき、現在幹を作るため語幹重複(または畳音, reduplication)や何かしらの音を挿入した形が現在とは異なり(同じならば未完了)、時称接尾辞がない(あれば第一アオリスト)から、第二アオリスト/直説法/能動態であるとわかる(P.67, §90.の変化表を確認のこと)。

第二アオリストでも現在と形が同じになる語があるが、少なくともδίδωμιの第二アオリストでは、現在幹を作るための重複(または畳音)であるδιが落ちて違う形(現在 : διδω-またはδιδο-, 第二アオリスト : -δω-または-δο-)になる。

これが未完了ならば、P.67, §90.の変化表を見ればわかるように、-διδο-のようになり、現在と同じ形になることがわかる。

更に語頭のε-は、完了(第31課以降で学ぶ)の重複(または畳音)と見ることもできない(詳しくはP.122, §160.を参照)。 また完了系統の変化につく特徴的な時称接尾辞(-κα--κε-など)も見られないことから、完了系の変化(副時称に限るなら過去完了)である可能性は否定される。

直説法以外の法(接続法, 希求法, 命令法)を考えるとき、これらの法にはアオリスト(副時称)であっても加音が付かない。 希求法は時称によらず基本的に副時称の人称語尾を使う(接続法は基本的に本時称の、命令法はまた少し違った形をとる)としても、である。 したがって、これらの可能性も否定される。

能動態以外の態(中動態や受動態)もまだ学習していないし、そもそも人称語尾が違う(本時称はP.100, §132.を、副時称はP.104, §140.を参照のこと)。 したがって、これらの可能性も否定される。

これらのことから鑑みても、ἔδοσανδίδωμιの三人称/複数/アオリスト/直説法/能動態であることがわかる。 議論が冗長になったが、これらのいくつか(未完了と第二アオリストとか、直説法と接続法など)が同じ形になることがあり、そのときは文脈からどの形で読むことが最も妥当な内容になるか、を判断する必要がある。

τοῖς ἄλλοιςは男性でも同形であるが、生き物を意味するζῷονや野獣を表すθηρίονのように動物一般を表すときに中性名詞を使うことが多いことから、ここでは中性とした。

πάντωνも男性, 中性で同形だが、「あらゆるものの中で」と中性の部分属格と解した。

最初のὅτιに導かれる節は形式上διένειμανまでであるが、実際の内容は文全体の最後までであることを考え併せると

ある(τις)ποιητήςは(ὅτι以下のことを)言っている、(つまり)

θεόςたちがζῷονたちをποιέωした時(ἐπειδή)、それぞれ(ἕκαστος)の(ζῷονたちに)γέραςδιανέμωした。 ταῦροςたちにκέραςを彼ら(=θεόςたち)はδίδωμιした。 そして(彼らは)ἵπποςたちにはὁπλήを、ὅρνιςたちにはπτέρυξを、他の(生き物たち, τοῖς ἄλλοις)には他の何かそのようなもの(ἄλλο τι τοιοῦτον)を(δίδωμιした)。

だが(δέ)彼らはἄνθρωποςたちには、そのようなもの(τοιοῦτον)を何も(οὐδέν) δίδωμιしなかった。 そうではなくて(ἀλλά)、(彼らは)ἀνήρたちにはἀρετήを、γυνήたちにはκάλλοςを(δίδωμιした)。

これらのこと故に(διὰ ταῦτα)、γυνήはあらゆるものの中で(πάντων)、κράτιστοςである。 というのも(γάρ)、ἀνήρたちはἀρετήで(手段の与格)あらゆるもの(πάντα)をνικάωするが、これに対して(δέ) γυνήたちは、κάλλοςでもってἀνήρたちをνικάωするのだから。

と。

くらいの内容が、本課題文の文意と思われる。


ギリシア語小辞トップに戻る
ギリシア語方言トップに戻る
ギリシア語文法トップに戻る
ギリシア神話トップに戻る
トップに戻る